鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
袴田課長が私の手を掴み上げる。
その瞬間、バサリと前髪が落ちてきた。

「そういう事情なら、ちゃんと人事に通しておく。
……けどな」

私が手に持ったままだった眼鏡を取り、彼がかけてくれる。

「いまはそれくらい、化粧でどうとでもなるんだ。
うちには病院と共同で、チョーコみたいに傷痕に苦しむ、子のための研究をしている部署がある。
興味があるなら紹介してやる。
……ん?
いや、ちょうどいいからサンプルになれ!」

さもいい考えだとばかりに笑っているけれど……どうしていい雰囲気だったのに、自分からぶち壊す?

「本日はありがとうございました」

その後は何事もなく……とは、あの袴田課長がいるからいかなかったけど、まあ終わった。

「では採用が決まりましたら、ご連絡いたします」

「えー、俺がチョーコがいいって言ってるんだから、採用だろ!?」

袴田課長がまたわがままを言い、国元さんが大きなため息を落とした。
こんな大会社に自分が採用されるなんて思っていないが、もしそうなったら職場は賑やかそうだ。

「化粧でどうとでもなる、か」

家に帰り、ひさしぶりにまじまじと火傷の痕を見る。
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