鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「サンキュー、チョーコ。
チョーコなら絶対、そう言ってくれると思ったよ。
じゃあ、よろしくねー」

言質は取ったとばかりに一気に袴田課長がご機嫌になる。
なんか、上手く丸め込まれた気がしないでもない。
でも、メインは花谷さんがやってくれて私は補佐でいいならなんとかなるか、……なんて思った私が甘かった。



「苺チョコ、ちゃん!」

「ひゃっ!」

いきなり後ろから抱きつかれ、変な声が出た。
おそるおそる振り返ったら、神月さんがにこにこ笑って立っている。

「……あのー」

「ん?」

私が声をかけるだけで顔を輝かせる彼は、まるでわんこのように見えた。

……うん、犬だ。

私は犬種にあまり詳しくないが、ゴールデンレトリーバーとか長毛の大型犬。
その証拠に、背後でふさふさと振られている尻尾が私には見える。

「……今日は打ち合わせとか、ないはずですが……」

昨日の今日でモデルを呼んでしなければならないことなどない。
あとは何度かある、撮影しか用はないはずだ。

「僕が苺チョコちゃんに会いたいから、来ただけだけど?」

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