鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「とりあえず、あちらの都合とはいえお引き取りいただけてよかった。
と、いうわけで、仕事に戻りましょう!」

「そうですね」

先に歩きだした彼女の背後でそっと、唇に触れる。

……嫌だった?

ううん、なぜか彼にキスされても、嫌じゃなかった……。

夕方になって戻ってきた袴田課長は自分の席には行かず、直で私のところへ来た。

「チョーコ!
神月さんにキスされたんだってな!」

ガシッ、と私の肩を掴む彼の手が痛い。
私を見る目は、怒っているようだった。

「な、なんで知ってるんですか……」

まさか、国元さんがしゃべった、とか?
いや、それはないだろう、彼女に限って。

「ん?
社内で回りまくってるぞ」

彼が見せてくれた携帯には、【神月伶桜がうちの会社の子とキスしてた!】なんて文字と共に、先ほどのあれの画像がメッセージアプリの画面に表示されていた。

「コンプライアンス!」

反射的に勢いよく立ち上がる。
私はいい、いやよくないが、神月さんはこんな画像が流出したら、仕事に差し支える。

「人事に……ってこの場合、人事でいいんですか?」

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