鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
袴田課長に訊いている時点で間抜けすぎるが、訊ける人が彼しかいなかった。

「ん?
もう上には話をしてあるぞ。
そろそろ……」

彼の声と共にパソコンがポン!とメッセージの到着を告げる。
【至急! 全職員必ず閲覧のこと!】とかなり強い件名で社内メールが届いていた。

「えっと……」

「いいよ、開けてみ?」

促され、メールを開く。
そこには、当社を訪れたモデルのプライベートを盗み撮りした画像が出回っているようだが、即刻消去のうえ、万が一にでも外部へ流出した場合は厳罰に処す、とさらに強い口調で書いてあった。

「こんなの神月さんの事務所にバレたら、損害賠償ものだからな。
速攻で揉み消すに決まってるだろ。
取った張本人捜しもはじまってる」

「よかっ、た……」

いくら原因は彼にあるとはいえ、こんな迷惑をかけるわけにはいかない。

「んで。
チョーコにも話を訊きたいんだと。
まあ、そうなるよな」

「……」

淡々とした袴田課長の声は、私を責めている。
社内で軽率にこんな行為をしたことじゃない、私が神月さんとキスしたのを責めていた。

「……人事、行ってきます」

「俺も行く」

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