鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「ドライブ……も、苺チョコちゃんの顔を見つめてしまって、事故を起こしたら困るしね」

手を頬に当て、悩ましげに彼はため息をついているが。
……私の顔のどこに、そこまで見つめたい要素があるのだろう?

「ああ、そうだ。
僕の家でお家デートなんてどうだろう?
それなら一日中、苺チョコちゃんの顔を見つめていられる」

さもいい考えだとばかりに、にっこりと彼は笑った。

「……その」

「なんだい?」

なぜか、私に話しかけられるだけで嬉しくて仕方ない、という顔を神月さんがする。
その証拠に、背後にはふさふさと勢いよく振られる尻尾が私には見えた。

「私とデートだとか、大問題なのでは?
しかも、家にお邪魔するとか」

最大限遠回りをして彼の提案をお断りする。
そんな問題があろうとなかろうと、私には彼とデートする気などないが。

「別に僕は事務所と、恋人を作らない契約をしていないから問題ないけど?」

どうしてそんなことを訊かれるのかわからない、というふうに彼の首が僅かに傾いた。

「えっと……。
マスコミ、とか」

【神月伶桜、一般女性とお忍びお家デート!】

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