鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「うん?
あんな危ない家に苺チョコちゃんをひとりで置いておけないよ」

神月さんが心配してくれているのはわかる。
でもそれと、彼の家に住むのは別の問題なわけで。

「……しっかり戸締まりしますから、大丈夫です」

現にいままで、なにもなかった。
これからもなにもない……はず。

「……はぁーっ」

神月さんの口から、長くため息が落ちていく。
私はなにか、呆れられるようなことを言っているだろうか。

「僕が。
心配なの。
……それは、わかってくれる?」

「うっ」

今日もかけている、眼鏡の上の隙間から上目でうかがわれ、言葉に詰まる。

「もし、苺チョコちゃんになにかあったら、僕は後悔してもしきれないよ」

両手で手を掴まれ、うるうると潤んだ目で見つめられたらもーダメ。

「だから僕の家で一緒に暮らそうね」

「うっ。
……前向きに、検討します」

それでも最大限の譲歩で、なんとか踏みとどまる。

「前向きに、ってことは、もう決定だよね?
やったー、これで苺チョコちゃんと同じ家で生活できるー!」

なのにその返事は神月さんの中ではイエスらしく、勝手に同居が決まってしまった……。

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