鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
家の件で揉めているうちに、高級住宅地で有名な場所へ入っていた。
その中でもひときわ立派な家の中へと車は入っていく。

「お帰りなさいませ、旦那様」

「ただいまー」

車を降りたら、いかにもなタキシードを着た、あまり年の変わらなさそうな男性が出迎えてくれた。

「え、いまのって……」

困惑する私を連れて、神月さんは家の中へと入っていく。

「執事のセバスチャンだよー。
あ、セバスチャンっていうのは、僕がつけたあだ名だけど。
本当の名前はなんだったかなー?
あ、でも、苺チョコちゃんもセバスチャンって呼べばいいからね?」

「はぁ……」

きっとこの人は、人をあだ名で呼ぶのが好きなんだろう。
私もいまだに、苺チョコちゃんだし。

通されたリビングは、たまに仕事で借りることがある高級ハウススタジオよりもさらに立派だった。

「……神月さん、って」

「僕かい?
僕はただの、モデルだよ」

ふふっ、とか彼は笑っているが、絶対に違うと思う。

すぐにメイドさんがお茶を淹れてくれた。
ええ、こちらも正統派メイド服を着ている。

「ありがとう、エリザベス」

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