鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
彼女は黙ってあたまを下げて下がったが、絶対にエリザベスという名ではないと断言できる。
だってどう見たって、日本人だったし。
仮に、ハーフかクオータだったとして。
いや、親が国際的に通じる名前に、とかでつけたとしても、違うはずだ。
だってこの、神月さんちのメイドだよ?

勧められてお茶を飲む。
カップはウェッジウッドだし、このお茶もフォートナム&メイソンだったとしても驚かない。

「……あの」

「なんだい?」

ぱーっと神月さんの顔が輝き、毎度のごとくぱたぱたと振られる尻尾が私には見えた。

「……ちなみに、運転手の方はなんというお名前なんですか」

ただの、好奇心だったといっていい。
だって、執事のセバスチャンにメイドのエリザベスだよ?
運転手だって普通の呼び名じゃないはず。

「彼かい?
名前はなんといったかな?
僕はゴルゴって呼んでいるけど」

「……ゴルゴ」

予想していたのとは全く別の名前が出てきた。
けれど眉が太く、眉間になんで力が入っているんですか? ってあの顔は……確かに、ゴルゴだ。

「さて。
いまからなにをしようか」

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