禁断の味はチョコレートのように
金曜の夜、杏と利奈が訪れたのは外資系の高級ホテル。
そこのイタリアレストランを貸し切っていると聞き、杏は自分が場違いの場所に来たことを痛感していた。
「こんな服で良いんでしょうか」
「良いじゃ無い。変に気合い入れすぎない方が良いから」
杏は落ち着いた色のワンピースにジャケットを羽織り、アクセサリーも小粒のものだけでシンプル。
利奈は背が高くスタイルの良さを生かすようにジャケットにタイトスカートだが、ブラウスの胸元は広めに開いていて同性の杏ですらその胸元に目線がいってしまう。
エレベーターを使い高層階で降り利奈がお目当てのレストラン前に行けば、黒服の男性スタッフが笑顔で声をかけてきた。
杏は招待用のメールをスタッフに提示し、中に促され足を踏み入れた。
薄暗い中に間接照明が淡く光るレストランは、座る席は少しだけあるがほとんど片付けられ立食パーティーのようになっている。
カウンターではバーテンダーがカクテルを作り、そのカウンターには何組かの男女が談笑していた。
「利奈ちゃん」
「川島さん!」
利奈に声をかけてきた男に、利奈はパッと明るい笑顔を見せる。
隣にいた杏は乙女のような利奈の笑顔を初めて見て驚いていた。