悪役だった令嬢の美味しい日記
②出来る爺の独り言
それは、お嬢様が高熱で何日も臥せっておられた後に起きました。
「お嬢様。何か、お召し上がりになりたい物はございますか?」
「あのね……ポテサじゃなかった。ポテトサラダが食べたいの」
「畏まりました」
病み上がりのお嬢様のご要望にお応えして、ポテトサラダをお出ししたのですが――出されたポテトサラダを見て、見るからにガッカリするお嬢様。あぁ、先程も小声で『ポテサラ』と言いかけていらっしゃいましたしね。アルバの方は、『ポテサラ』なんて短縮して仰ったりしません。お嬢様も転生者なのですね。今まで片鱗は見えてませんでしたから、高熱の時にでも思い出されたのでしょう。お聞きの通り、私も転生者でございます。何も、転生者は若者だけではないのですよ。
しかし、お嬢様には感謝ですね。ポテトサラダのために、お料理を早くからやりたいとお願いされて始められました。勿論、全力で協力いたしましたよ。何せ私も日本で食べたポテトサラダ食べたかったんですが、料理はからきし駄目ですからね。そちら方面は不器用なんですよ、私でも。こう何年もアルバで生きていると、日本のものが恋しくなってきますしね。前世持ちの残念な部分ですよね。
初めてお嬢様がアルバで作られたポテサラは、大変懐かしいお味で、涙が流れていくのを止めるのに必死でした。美味しかったですよ、数十年ぶりの日本の味は。
それからというもの、お嬢様は料理する条件として出されたお勉強の合間を縫って、日本で食べた懐かしい料理や懐かしい調味料をいかしたオリジナル料理、また流行っていたであろう料理までどんどん作るようになられました。日本食が食べれるのも嬉しかったですが、お嬢様が木登りや戦いごっこより女の子らしくお部屋の中で出来るお料理に興味を持っていただけたのが、爺やとしては嬉しかったですね――後に、旦那様に連れられて、生き生きと野営討伐に参加されてしまいますが。
「あ! アルマン!」
振り返ると、声とともにポスッと飛び込んでこられたお嬢様。おやおや、お勉強の成果はどちらへ?
「お嬢様、淑女が走ってはいけませんよ? いかがなさいましたか」
「は! そうだった!! ヤンからもち粉手に入ったって聞いたら、いてもたってもいられなくてつい……。ごめんなさい」
そういえばヤンがそんなことを言ってましたね、お嬢様が探していたものが見つかったと。成程、白玉粉でしたか……満月も近いですし、お月見でもしたいのでしょうか? それならば、喜んで協力せねばなりませんね?
「奥様から注意するよう仰せつかって目を光らせてはおりますが、一使用人に謝らないでください。お嬢様のお勉強のお手伝いをさせていただいているだけですので、お嬢様が次から気を付けていただければいいことですよ」
「うん! 次から気を付けるね! いつも教えてくれてありがとう、アルマン」
「いえ、滅相もございません。ところで、お嬢様。私めに御用ですか?」
「そうそう! 甘い物好き? もち粉も手に入ったし、明日満月だからお月様見ながらお団子食べようと思って。夜寒いし、小豆のあったかくて甘~いスープにお団子浮かべるの!」
向日葵が咲いているようにニコニコの笑顔で仰っているのは、お汁粉ですね? アルバの方は小豆やあんこは分かっても、お汁粉は分かりませんものね。勿論、いただきます。爺やは、日本食も甘い物も好物ですよ?
「甘い物も好きですが、お嬢様が作るものは何でも好きですよ? それに、寒い夜に温かくて甘~い物とは――なんだか美味しそうな響きですね」
「ホント!? じゃあ、アルマンにも作るから、明日楽しみにしててね!」
「ええ、勿論です。ありがとうございます」
「お勉強行ってくるね!」とジゼルとニナを連れて、公爵邸の図書室の方へ足を向けるお嬢様。時折何かを気にされてはいますが、そんな中でもゆっくりとではあるにせよ殿下に絆されているようで。婚約者の仲が良いのは、宜しいことかと思いますが……何を気にされているんでしょうねぇ。そのうち探りを入れてみますか。まあ、お嬢様が嫌がることは致しませんし、知りえた場合は殿下にも内密にいたしましょう。だって、ねえ? 王家に忠誠を誓っていますが、お嬢様は別ですよ? それに、王家に忠誠は誓ってますが、リオネル殿下が《《私》》を使えるかも――別ですよね。
あ、私の同僚に聞いてみるのもいいかもしれませんね。私よりお嬢様に近いですし。同僚も転生者なのですが……どなたでしょうね? これも、殿下方にも内緒の話です。
チリン……。
おや、奥様がお呼びですね。私とした事が、長く話しすぎました。もう少しお話ししたいところですが、またの機会にでもいたしましょう。あ、くれぐれも『転生者』や『前世』のお話は、内密にお願いしますよ? おバカな貴族達に知られると、ちょっと面倒なんでね。それではまたお会いしましょう。失礼いたします。
「お嬢様。何か、お召し上がりになりたい物はございますか?」
「あのね……ポテサじゃなかった。ポテトサラダが食べたいの」
「畏まりました」
病み上がりのお嬢様のご要望にお応えして、ポテトサラダをお出ししたのですが――出されたポテトサラダを見て、見るからにガッカリするお嬢様。あぁ、先程も小声で『ポテサラ』と言いかけていらっしゃいましたしね。アルバの方は、『ポテサラ』なんて短縮して仰ったりしません。お嬢様も転生者なのですね。今まで片鱗は見えてませんでしたから、高熱の時にでも思い出されたのでしょう。お聞きの通り、私も転生者でございます。何も、転生者は若者だけではないのですよ。
しかし、お嬢様には感謝ですね。ポテトサラダのために、お料理を早くからやりたいとお願いされて始められました。勿論、全力で協力いたしましたよ。何せ私も日本で食べたポテトサラダ食べたかったんですが、料理はからきし駄目ですからね。そちら方面は不器用なんですよ、私でも。こう何年もアルバで生きていると、日本のものが恋しくなってきますしね。前世持ちの残念な部分ですよね。
初めてお嬢様がアルバで作られたポテサラは、大変懐かしいお味で、涙が流れていくのを止めるのに必死でした。美味しかったですよ、数十年ぶりの日本の味は。
それからというもの、お嬢様は料理する条件として出されたお勉強の合間を縫って、日本で食べた懐かしい料理や懐かしい調味料をいかしたオリジナル料理、また流行っていたであろう料理までどんどん作るようになられました。日本食が食べれるのも嬉しかったですが、お嬢様が木登りや戦いごっこより女の子らしくお部屋の中で出来るお料理に興味を持っていただけたのが、爺やとしては嬉しかったですね――後に、旦那様に連れられて、生き生きと野営討伐に参加されてしまいますが。
「あ! アルマン!」
振り返ると、声とともにポスッと飛び込んでこられたお嬢様。おやおや、お勉強の成果はどちらへ?
「お嬢様、淑女が走ってはいけませんよ? いかがなさいましたか」
「は! そうだった!! ヤンからもち粉手に入ったって聞いたら、いてもたってもいられなくてつい……。ごめんなさい」
そういえばヤンがそんなことを言ってましたね、お嬢様が探していたものが見つかったと。成程、白玉粉でしたか……満月も近いですし、お月見でもしたいのでしょうか? それならば、喜んで協力せねばなりませんね?
「奥様から注意するよう仰せつかって目を光らせてはおりますが、一使用人に謝らないでください。お嬢様のお勉強のお手伝いをさせていただいているだけですので、お嬢様が次から気を付けていただければいいことですよ」
「うん! 次から気を付けるね! いつも教えてくれてありがとう、アルマン」
「いえ、滅相もございません。ところで、お嬢様。私めに御用ですか?」
「そうそう! 甘い物好き? もち粉も手に入ったし、明日満月だからお月様見ながらお団子食べようと思って。夜寒いし、小豆のあったかくて甘~いスープにお団子浮かべるの!」
向日葵が咲いているようにニコニコの笑顔で仰っているのは、お汁粉ですね? アルバの方は小豆やあんこは分かっても、お汁粉は分かりませんものね。勿論、いただきます。爺やは、日本食も甘い物も好物ですよ?
「甘い物も好きですが、お嬢様が作るものは何でも好きですよ? それに、寒い夜に温かくて甘~い物とは――なんだか美味しそうな響きですね」
「ホント!? じゃあ、アルマンにも作るから、明日楽しみにしててね!」
「ええ、勿論です。ありがとうございます」
「お勉強行ってくるね!」とジゼルとニナを連れて、公爵邸の図書室の方へ足を向けるお嬢様。時折何かを気にされてはいますが、そんな中でもゆっくりとではあるにせよ殿下に絆されているようで。婚約者の仲が良いのは、宜しいことかと思いますが……何を気にされているんでしょうねぇ。そのうち探りを入れてみますか。まあ、お嬢様が嫌がることは致しませんし、知りえた場合は殿下にも内密にいたしましょう。だって、ねえ? 王家に忠誠を誓っていますが、お嬢様は別ですよ? それに、王家に忠誠は誓ってますが、リオネル殿下が《《私》》を使えるかも――別ですよね。
あ、私の同僚に聞いてみるのもいいかもしれませんね。私よりお嬢様に近いですし。同僚も転生者なのですが……どなたでしょうね? これも、殿下方にも内緒の話です。
チリン……。
おや、奥様がお呼びですね。私とした事が、長く話しすぎました。もう少しお話ししたいところですが、またの機会にでもいたしましょう。あ、くれぐれも『転生者』や『前世』のお話は、内密にお願いしますよ? おバカな貴族達に知られると、ちょっと面倒なんでね。それではまたお会いしましょう。失礼いたします。