嘘つきは恋のはじまり✗ 恋の終わり???

「はーちゃん、なに食べる?
べっ甲飴好きだったよね?」



「あ、うん」



「どれがいい?
いつも赤だっけ?」



葵が赤いべっ甲飴を手に取った



ピンクに透けるべっ甲飴が
綺麗で好きだった

甘い匂い



思い出す

去年も食べた

涼と一緒に



「コレにする?」



赤いべっ甲飴に透ける涼



じゃなくて…葵だった



「私、今日は赤じゃないのにする」



「どれ?
何色にする?
いっぱいあるよ」



「色ついてないのがいいな」



「あ、そぉなの?」



透明のべっ甲飴を手に取った

何色も選びたくなかった



「じゃあオレ、赤にする」



赤いべっ甲飴と透明のべっ甲飴



人を避けながら葵と食べながら歩いた



「葵、知ってた?
べっ甲飴って味はみんな同じなんだよね」



「そーなの?」



「知らなかった?」



「うん、知らなかった
前にはーちゃんが赤いの食べた時
はーちゃんイチゴの味したよ」



「そぉ?
色で騙されてるんだよ
じゃあ、緑は?」



「メロン」



「黄色は?」



「レモン」



「紫は?」



「紫…ぶどうかな?」



「ハハハ…葵、騙されてる
全部同じ味だよ」



「あ、はーちゃん笑った
よかった」



久しぶりに笑った気がする

涼と別れた日から笑ってなかった



「うん、ごめんね
心配かけて…
もぉ大丈夫だよ」




ずっと心配してくれてた



「はーちゃんが食べてる透明は
どんな味なのか気になる」



「だから同じだって…」



葵が急に近くなって
男の人の匂いがした



「ん?葵なんか香水つけてるの?」



「ちょっとね…嫌?」



「んーん…大人になったな…って…」



「いい匂い?」



「…ん?」



涼の匂いと違う匂い



「はーちゃんは、いい匂い
甘い匂いする」



葵が私の襟元に顔を近付けた



「べっ甲飴の匂いじゃない?」



「それとは違う
はーちゃんの匂い好き」



葵の熱が伝わってくる



浴衣ってやっぱり暑いな…



「はーちゃん、好き…」



ーーー



葵が私の口を舐めた



「んー…なに?もぉ、葵!」



持ってた籠バッグで葵をたたいた



「はーちゃんの味」



熱い



なに?

全身が熱くなる




何したの?



目の前にいる葵は
無邪気に笑ってる



「葵、口赤いよ」



「ウソ?マジ…」



「ハハハ…べっ甲飴の色かな?」



「はーちゃんの口紅の色でしょ」



「え、ごめん…拭かなきゃ…」



バッグの中のハンカチを探した



「いい、別に…」



葵がべっ甲飴を頬張った


ちょうど目の高さの葵の喉仏が動く



「葵、喉つっかえないでよ」



「うん、もぉ子供じゃないから大丈夫」



「ホントだね
いつの間にか私より背も高くなったし…」



涼は
もう少し高かったな…


涼は…


さっきから
涼のことばっかり考えちゃう



「はーちゃん、早く忘れてよ」



「ん?」



「あんなヤツのこと、早く忘れろよ」



「あんなヤツ?」



「別れたんだから…
もぉ考えるなよ」



涼のことだ



すごく嫌な気持ちになった



私にとって涼は
あんなヤツなんかじゃない



大好きなカレシだった



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