嘘つきは恋のはじまり✗ 恋の終わり???
深瀬とコンビニを出て
すぐ向えの居酒屋に走った
ぜんぜんオシャレでもなんでもない
大衆居酒屋
「雨ヤベー
数メートルでも結構濡れたね」
席に着いて
「あ、ハンカチありがと」
さっきのハンカチを深瀬に返された
「うん」
「そっち濡れたからオレの使う?」
深瀬が自分のハンカチを出した
深瀬、ハンカチ持ってるんだ
もぉ社会人だもんね
「そんな濡れてないから大丈夫だよ」
お互い自分のハンカチで雨を拭いた
私の匂いじゃない匂いが微かにした
深瀬の匂い
あの時と少し違う
「とりあえず、オレ、生…
芭は?」
お酒飲めるんだ
私たち
「んー…じゃあ私も…」
「甘いのじゃなくて大丈夫?」
「うん」
そーゆー気遣いできるとこ変わってない
数年間の空白について何も話さないまま
コンビニからここに来た
ハンカチ持ってるし
ビールも飲める
高校の時はしてなかった
腕に時計もしてる
あの時の深瀬じゃない
時は経ってる
なんか不思議
「何食べる?
オレ、サラダと…」
深瀬がメニュー表を見て言った
なんかおかしくなった
「ん?なに?
芭は?なにがいい?」
「サラダ…って、なんか女子だね」
「女子って言うな
独り暮らしで野菜取れてないから」
もしかして
私が食べたいと思って頼んでくれた?
「じゃあ私、レバニラ」
「いいね!
唐揚げとメンチカツどっちがいい?
芭食べれる?」
「んー…どっちも」
「そんな食えるん?」
「うん
深瀬が食べて」
今
初めて目がちゃんと合った
「深瀬…元気だった?」
目の前にいる深瀬は
ネクタイしてるせいかな?
なんか大人っぽくなってた
「うん、元気だったよ
…
芭の中では
深瀬なんだ、オレって…」
深瀬
迷ったけど
意識してそぉ呼んだ
優しい声
懐かしい地元のイントネーション
話しやすい受け答えとか
少しうつむいて笑う仕草は
あの時を思い出させた