嘘つきは恋のはじまり✗ 恋の終わり???
「あ、こっちでさ
おすすめの店とかあったら教えてよ」
深瀬
自然に話題変えた
カノジョの話
聞いたらいけない雰囲気
「カノジョと行く店?」
意地悪とかじゃなくて
なんか聞いちゃう
「やー、そーゆーわけじゃなくて
ぜんぜん店わかんなくて
いつもコンビニで済ませてるから」
「んー、私もこっちに5年もいるけど
あんまりわかんないんだよね
だいたい家で食べちゃうし…」
カレシもいたことないから
デートもしたことなかった
「あ、地元のさ
よく行ってたラーメン屋あったじゃん」
「海老丸?」
「そーそー」
「私が好きだった海老味噌ラーメンね
懐かしいな」
「こっちの会社の近くに似た店あったから
同僚と行ったんだけど
ぜんぜん海老丸と違った」
「そんなに美味しかったの?」
「や、逆
海老丸の方が美味かったよ」
「海老味噌ラーメン最強!
また食べたいな…」
放課後、よく深瀬と行ったよね
深瀬と行ってたから美味しかったのかな?
「あとさ
あのクレープ屋、またメニュー増えてた」
「MARIO?
私達が高校生の時も50種類はあったよね
なのに深瀬いつもチキンサラダだった」
「今も相変わらずチキンサラダ1択だけどね」
「メニュー増えても意味ないね」
地元話
懐かしいね
一瞬あの時に戻る
「海老丸もMARIOも
カノジョと行った?」
私と深瀬の思い出の場所
「うん、行ったよ」
そーだよね
「関西から来て
何もなくてつまんないとか言うから…」
深瀬
言い訳してるぽく聞こえる
別にいんだけどね
深瀬が誰と行っても
「たしかに何もないもんね、地元」
「まーね…」
でも私はこっちにいる今より
あの時の方が楽しかった
深瀬と一緒にいるだけでよかったんだ
「私と深瀬が見つけた
あの丘も一緒に行った?」
学校帰り
たまに遠回りして帰ってた
そしたら
町中が全部見える丘を見つけた
そんなに大きな丘でもなくて
今思うと小さな町だった
いつも誰もいなくて
私と深瀬のためにあるような丘だった
ふたりのお気に入りの場所だった
初めてキスしたのもそこだった
「あそこは行ってないよ」
「なんで?
深瀬のお気に入りの場所だったじゃん」
「うん
だから、教えたくない」
「美味しいお店教えるのと同じでしょ」
「あそこは
オレと草薙しか知らなくていい」
なんかちょっと嬉しかった
「草薙、成人式来なかったね」
「あー、うん
なんか帰れなくて…」
「草薙が言ったんじゃん
成人式で会えるかも…って」
深瀬、覚えてたんだ
「こっち来てから
あんまり帰ってないんだ
うち親が再婚同士だからさ
実家帰るのなんか気使う」
「だからこっち来たかったん?」
「うん、そーかも…」
「ごめん
一緒に来れなかった」
「んーん…ぜんぜん
深瀬こっち来てたら
今のカノジョに会えてなかったじゃん」
よかったんだよ
深瀬はこっちに来なくて
「んー…」
「深瀬の運命の人かもよ」
「んー…」
いつかみたいに
運命なんか信じないって
深瀬は言わなかった