CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた

「……少しは自分で考えたら?」

突き放したような眼差しと声音に、背筋が寒くなるのを感じた。

(急に…どうして…)

蓮さんの顔立ちは玲さんと双子なだけあり、そっくりだ。だけど……玲さんには決して無い影の部分、底知れない冷たさを感じる。

彼の尋常でない凄みは、陽のあたる場所で過ごしてきた人には到底身に付かない。拒絶されたのだ、と全身でピリピリと感じ取れた。

そして、私はつまらない上っ面の言葉しか返せない。

「あ…あなたは、私には義弟(おとうと)です。夫の弟で、妹の夫。気にするのは当然です!」
「義弟……ねぇ」

ククッ、と蓮さんはいかにも可笑しそうに笑うから、少し頭に来てつかつかと歩み寄った。

「な、何が可笑しいのですか!?わ、私はあなたと仲良く……ッ」

突然、唇に柔らかさを感じた。

「れ……ンっ!」

もう一度、今度ははっきりと湿ったあたたかさを感じて。すぐ目の前に、整いすぎた顔があると認識した瞬間、私の手は動いた。

けれども、私の些細な抵抗など簡単にねじ伏せられる。

信じられないほど長い間私の唇を貪った彼は……私が無意識に唇を噛んでようやく止めた。

ぽろぽろと涙があふれて視界が滲む。

そして蓮さんは私の手に何かを握らせ、意味不明な予告をして立ち去った。


「今夜、アンタは必ずオレの部屋に来るだろう。…その時はその鍵を使え」

憐れむような、声だった。

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