CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた
烏丸さんに付き添われ、泊まっている部屋に帰ってきた。やはりボディーガードなだけあり、烏丸さんは気配を消すのが上手い。私が蓮さんと揉めていても、冷静に見守ってくださった…けれども。
(見られてた……烏丸さんに)
ソファに身体を投げ出し、ドサリと身体を横たえる。ワンピースがシワになるとかいつも気になる事は、全く頭から抜け落ちていた。
(あれは…キス……よね?私が……蓮さんと……?)
ドッドッドッドッ、と鼓動が速くなる。美香の夫とキスをしてしまった……。
いくら一方的になされた事でも、現実は私の唇は玲さんより前に奪われた……ということ。
「……っ」
ぽろり、と涙がこぼれ落ちる。
何のため、私は今まで異性と関わらないように努力してきたのだろう?全て玲さんとの結婚のためなのに……私は、穢れてしまった。
(ごめんなさい……玲さん……私がもっと気をつければよかった……)
両手で顔を覆い泣いてるうちに、いつの間にか眠ってしまったらしくて……気がつくと、ベッドの上にいた。
(やだ……私……眠ってしまったのね。玲さんをお出迎えしなくちゃいけなかったのに……)
慌ててベッドから降りると、ベッドルームのソファに玲さんらしき後ろ姿があったから、軽く髪だけ整えて歩み寄った。
「あの……玲さん、ありがとうございました。私を運んでくださって…お手数をおかけしました」