CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた
最期まで献身的に看病してもらい、20年経っても愛され他の女性を見ない。それほど一途に深く愛される……。
(羨ましい…わ)
そんなことを考えてしまい、ハッと我に返り恥ずかしく思う。
(でも…きっと…私には得られないものね)
所詮、政略結婚。
玲さんからは愛されないし、蓮さんは義弟でただ身体だけの関係。そう思うと、沢村のお父様には申し訳なさ過ぎて情けなくて…。
(ごめんなさい……お義父様。私は……とんでもない、許されない罪を……ごめんなさい)
本当なら、こんなふうにのうのうと同じ車に同席など許されないのに。耐えられなくて、目の奥が熱くなる。
(駄目よ…泣いては。お義父様に不審に思われてしまうわ…笑って)
「行き先は、ホテルAでのウエルカムパーティーですね。目的は来日中のスミソン上院議員ですか」
「ああ。大統領とのパイプが太い彼とは懇意にしておく必要がある。次期大統領選挙での民主党副大統領候補でもあるしな」
「改憲への地ならし…ですね」
蓮さんとお義父様が難しいお話をされだして、改めて沢村家に嫁いだ覚悟を決める。次期副大統領候補なんて大物……とても佐伯家にいてはお会い出来なかった。
でも、なんだか緊張してきた。今までセレブと呼ばれる方にお会いする機会があっても、異国のトップに近い方なんて…失敗は許されない。
ガチガチに緊張して、身体が震えてきた。
けれども。
突然、蓮さんは私を抱き寄せると、そのまま唇を重ねてきた。
「……っ…!」
ついばむような、軽いキス。だけど、何度も何度も…私の弱い部分を刺激してきて。
頭が真っ白になったころ、ようやく開放してくれた。
「頭と身体が柔らかくなったな」
ニヤッと笑う彼を涙目で睨みつけた。お義父様のいらっしゃるところで!と恐る恐る見たら、車内電話で何やらお話中。
ほっとしたけれども……なんだか、自分が抜け出せない沼に溺れたような。そんな気がした。