年下男子は恋愛対象になりますか?
【32】それから
空の色がオレンジと紫のグラデーションに染まった頃、私は自分の部屋に戻ってきていた。

財布を開けて、その中に入れておいた物を取り出す。昼間にこれを発見した時はショックだったのに、今こうして持っているのが不思議な気分だった。

キーケースもキーホルダーも付いていないシンプルな鍵。しばらく眺めた後に両手で握りしめる。

今日も泊まって行きませんかと言われた後、何も答えないでいたら気まずい空気になった。

忘れて下さいと笑いながら言ってくれたけど、どことなく落ち込んでいるのが伝わってきて。だから、アパートを出る時間になるまでどうするか考えた。

『や、やっぱり泊まろうかな。隼人君のバイトが終わる頃に……また来てもいい?』

『本当ですか!』

帰る時に寂しくなったとはいえ、我ながら凄い決断をしたと思う。

その流れで渡してくれた鍵。
好きな時間に来て下さいと言われたけど、帰ってくる頃にあわせて行く予定でいる。

美樹が心配してくれていたので電話をかけると、今から隼人君のバイト先に行っちゃう?とからかわれた。

家を出るまで約4時間。落ち着かない。
< 506 / 725 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop