年下男子は恋愛対象になりますか?
死角に隠れていたら困るので、警戒しながらバスタオルを取る。

いない……よね?

洗面所を見渡しても隼人君はいなかったし、キッチンへと続くドアも閉まっていた。急いで身体を拭いて下着と服を身につける。

「隼人君のおかげで怖くなかったよ。ありがとね」

部屋に戻ると、ソファーに座ってスマホを見ていた隼人君と目が合った。見られていなかったとはいえ気恥ずかしい。

「それなら良かったです。俺にとっては良くなかったですけど」

「じゃんけんって言いだしたの隼人君だよ?」

「分かってます。ほら、こっち座って下さい」

いつものようにドライヤーを手に取り私を呼ぶ。少し機嫌が悪そうな感じがしたけど、髪の毛は乾かしてくれるらしい。

「……怒ってる?」

「怒ってなんてないですよ。ただ、俺が勝ってたら本当に一緒に入ってくれたのかなとは思ってます」

脚を開いて座っている隼人君の前に移動すると、スイッチを入れる前にそんなことを言われた。

負けたら一緒に入るつもりだったよ。ものすごい覚悟でじゃんけんしたんだけどな。

「由夏さんさっきから無言ですけど、俺怒ってないですからね?そう見えてるのであれば勝手に拗ねてるだけです。かっこ悪くてすみません」

ドライヤーの音と共に聞こえた隼人君の声。
こんなこと言ったら怒られるだろうけど、どんな顔をしているのか見たくなった。
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