年下男子は恋愛対象になりますか?
「入りますけど良いですか?」

約束通り、私が湯船に浸かったタイミングでやってきた隼人君。泡である程度見えなくなってるとはいえ、明るいしやっぱり恥ずかしい。

「う、うん」

ドアに背を向けて返事をする。
入ってくる音やシャワーの音、全ての音が心臓に悪い。ドキドキを通り越してバクバク。

「入りますよ?」

泡が揺れて端に寄ったのと同時に水量が増えた。溢れそうでギリギリ溢れない。

大人2人が一緒に入るには狭い浴槽。
お互いの足が触れるのは仕方ないと分かっていても、それだけで心拍数が上がった気がした。

「何でこっち見てくれないんですか?」

今、隼人君は絶対ニヤニヤしてるよね。声で分かる。

「分かってるくせに聞かないでよ!」

入る前に隼人君にお願いしていたことが2つあった。私がシャワーを浴びてから来てほしいってことと、意図的に触ったりしないでほしいってこと。

「由夏さん、やっぱりこっちに来て下さいよ」

「わ、私は向き合って入りたい派なの」

「そのわりには今も向き合ってるとは言えないですけどね」

やっぱり隼人君は意地悪。
約束を守ってくれてることもあって渋々向きを変えた。本当に今さらだとは思うんだけど、目が合うだけで恥ずかしい。

「隼人君が先に出てね?」

「何でですか。俺じゃなくて由夏さんが先に出て下さいよ。先に入ってたんですから」

「ガン見されそうだから絶対にやだ!」

否定しないでハハッって笑った。
ほら、やっぱりガン見するつもりだったんじゃん。

「大丈夫ですか?のぼせません?」

「……そう思ってるなら早く出てよ」

隼人君にまた一緒に入ろうって言われそうな気もするけど、もう入ることはないと思う。
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