年下男子は恋愛対象になりますか?
「大丈夫っすよ。好きな席に座って下さい」

え、ちょっと待って。
山岸君、さっき常連の子って言ってたよね。
常連ってことは何回も来てるってことで、えっと……

咄嗟に隼人君から見えないよう身体をずらした。山岸君が壁になってるし、気付かれないはず。

「どうしました?カウンター席に変更します?」

さっきまで軽かった足が急激に重くなる。
何か答えなきゃいけないのに言葉が出ない。

「大丈夫っすか?体調悪くなったんなら吉澤呼んできますけど」

それはダメ。困る。

「ご、ごめん!今日はやっぱり帰ろうかな。隼人君に内緒で来たんだけど、邪魔したら悪いし家で待ってることにする。驚かせたいから、私が来たことは内緒にしてくれない?」

山岸君が戸惑った表情で見てきたので、出来る限り明るく振る舞った。おかしいと思われて隼人君に話が伝わってほしくない。

「俺は別にいいっすけど」

「ありがと。じゃあ、そういうことでよろしくね!また今度寄らせてもらうから。本当にごめんね」

逃げるように店を出る。
隼人君が接客していた子はあの子だった。テーマパークでキスしてた子。

連絡先ブロックして話さないようにするって言ってくれたから、その言葉をずっと信じてた。

お客さんとして来られたら対応しなきゃいけないのも分かる。仕事中だからそういう態度だったのかもしれない。

でも、いつから?
いつから会ってたの?

バイト先に1人で来るってことは、まだ隼人君のことが好きってこと?
大学でも話しかけてきてる?

嫌だな。モヤモヤする。
笑顔で話していた光景が頭から離れなくなった。
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