年下男子は恋愛対象になりますか?
スーツケースをゴロゴロ鳴らしながら、近くのバス停に向かう。暗いけど人通りはそれなりにあった。

「さむ」

地元の空気は東京より冷たい。
ロングコートを着てマフラーぐるぐる巻きにしていても顔が寒く感じた。

タクシーを呼べば良かったと思ったけど、土曜だしすぐには来てくれないよね。何で自分の車で来なかったんだろ。

「全部隼人君のせいだ。バーカ」

前に言われたことを思い出した。
隠し事や嘘つかれたのが結構ショックだった、と。「俺も隠しごとしたり嘘ついたりしないんで」とも言ってたくせに。

これって隠しごとじゃないのかな。
隼人君はそう思ってなかったってこと?

こんなことになるなら帰ってくるんじゃなかったよ。晴香達とカラオケに行ってれば良かった。そしたら何も知らないで楽しく過ごせたのに。

何回も見たいって言ってたから会いに来たんだよ。驚いたあと喜んでくれるって思ってた。内緒で来た私が悪いのかな。

今もあの子と話してる?

「1人でいたくないな」

今から東京行っても、皆に気を遣わせちゃうだけ。美樹は佑介の家に行くって言ってたし。

バスに揺られながらSNSを開いてみると、晴香達が結婚式について色々呟いていた。久しぶりに反応したからか驚かれたけど、ライブ仲間とのやり取りは楽しい。



「ただいま」

「あら、土曜日に帰って来るなんて珍しいわね。ご飯用意してないわよ」

「あるもので適当に食べるから大丈夫」

この格好でいたくなかったから、すぐにシャワーを浴びて着替えた。

気晴らしに冷蔵庫に入っていた缶ビールを飲んでみる。それだけでは全然酔えなくて、普段飲まない焼酎を飲んでみたら気持ち悪くなった。

お酒の力を借りて、さっさと寝てしまいたかっただけなのに。
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