年下男子は恋愛対象になりますか?
ここは隼人君が住むアパートから近い。
自転車じゃなくてバスかな。待つ時間を考えても、そこまでかからないはず。

もうすぐ会うんだ。
気まずくなりたくないし、ちゃんと笑わなきゃ。

「うわ、隼人からめっちゃメッセージきた。愛されてますね。見ます?」

「ううん。それより友達は何時に来るの?」

左手首につけていた腕時計で時間を確認した。少し早いけど、もうショップに移動しようかな。隼人君の友達と2人でいるのは気まずいし。

「心配しなくても邪魔なんてしませんって。隼人に怒られたんで退散しますね。今度は俺のバイト先にも来て下さい。それじゃ」

突然来て、突然去って行った。
バイト先に来てって言われても、名前すら知らないのにどうしろと。まぁ、社交辞令だよね。

本を読む気にはなれず鞄にしまってボーっとしていると、入口付近でキョロキョロしている隼人君の姿が見えた。

立ったら目があったので、急いでトレーを片付ける。

「久しぶり」

「1週間ぶりですけど、それよりも久しぶりな感じがしますね」

いつも通りの笑顔。
ってことは、私の笑い方が不自然じゃないってことなのかな。

「スマホ取りに行きたいんだけど、いい?」

「もちろんです。どこでも付き合います」

嘘ばかり付くのも気が引けて、このタイミングで新しい機種に変更していた。残業続きでなかなかお店に行けなかったのは本当だったけど。

「やだ!」

店を出たところで手を繋がれ、おもいっきり振り払ってしまった。しかも拒否の言葉付き。

「……嫌、ですか?」

私のバカ。いくら笑顔を繕っても、こんな態度取ったら絶対怪しまれるのに。

「ご、ごめん!嫌とかじゃなくて、隼人君の友達に見られるかもしれないから繋ぎたくないだけなの」

会ったばかりでこれじゃ先が思いやられる。
喧嘩だけは絶対にしたくない。
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