年下男子は恋愛対象になりますか?
買い物を終えて駐車場に向かう間や、アパートに向かって走る車内でも、隼人君からは何も言われなかった。だから私もいつもと同じように振る舞う。

「わ、おでん作りすぎじゃない?」

「いっぱい食べて下さいね」

家に入ってからもそれは変わらなくて。
鍋の蓋を取って中身を見せてくれたので、その量に2人で笑いあう。

「隼人君、チョコ追加してくれたの?これ食べたことないやつだ」

冷蔵庫にお酒を入れようとしたら、先週買っておいたチョコレートの上に他の種類のものが置いてあった。

「新商品らしいです。由夏さん好きそうだなと思って買っちゃいました」

「ありがと。気になるから少し食べちゃおうかな。隼人君も食べる?」

箱を開けて中から個包装を2つ取り出した。
1つは隼人君の手に乗せて、もう1つは破ってから私の口の中。

「これ美味しい」

「それなら良かったです。また買ってきますね」

嬉しそうに笑ってくれたから、私まで嬉しくなった。大丈夫。あの話題にならなければ楽しく過ごせる。

と、思った矢先のこと。
隼人君の顔が近付いてきたので咄嗟に背けてしまった。あの子とのキスが浮かんだから、つい。

「ご、ごめん。嫌なわけじゃなくて、その」

冷蔵庫がピーピー鳴って、早く閉めろと知らせている。言い訳が浮かばない。隼人君の顔が見れなくなった。

「……何で謝るんですか。そういう時もありますよね。お酒飲むなら先にお風呂入ります?沸かしてきますから、あっちでくつろいで下さい」





「お風呂ありがと」

部屋に置かせてもらっている服を身につけ、タオルで髪を拭きながら部屋に戻る。

洗面所にドライヤーがないと思ったら、こっちに置いてあった。今日も乾かしてくれるみたい。

「嫌じゃなければ俺にやらせて下さい」

「嫌なわけないじゃん。隼人君に乾かしてもらうの好きだよ」

お互い笑ってるけど気まずい。
なんで何も聞いてこないんだろ。
< 638 / 737 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop