年下男子は恋愛対象になりますか?
キッチンに向かうのを止めて再び座ると、掴まれていた手が離れた。

「分かった。今日はちゃんと聞く」

本当は聞きたくない。
知りたくない。嫌だよ。

「ありがとうございます。あの、実は……条件をのまないと由夏さんに危害を加えるって言われて、それで」

何それ。

「うん。条件って?」

「大学ではともかくバイト先に客として行った時は、仲が良いと思わせるような笑顔で接すること、です」

「そう。いつから、どれくらいのペースで会ってたの?」

「11月の上旬ぐらいに大学で言われて、それから毎週土曜日に来ていました。でも、これは由夏さんを守る為に仕方なく」

ほら、やっぱり聞くんじゃなかった。
聞く前より悲しくなっただけだった。

「今日……土曜、だね」

「ご、誤解しないで下さい!約束していた期間は11月のみなんです」

馬鹿みたい。
馬鹿みたい。
馬鹿みたい。

「来てたらどうするつもり?きっと来てるよ?それで条件がエスカレートして、大学でも笑顔で話してとか、デートしてとか、キスしてとか、セックスしてとか言われるんじゃない?そしたら応じるの?だいたい、その子と私が会うわけないのにどうやって危害を加えるわけ?あぁ、隼人君の家の場所知ってたら簡単に会えるかもね。でも、それでも、そうだとしても、そういう話をされた時に相談してほしかった。そんな理由で私は……」

気まずくなりたくなくて、別れたくなくて、この1週間色々悩んだのに。

「隼人君のバカ!もう知らない!」

近くにあった枕やソファーに置いてあったクッションを次々と投げつける。テレビの前に飾ってあった水族館で買ったぬいぐるみも。

「アイツなら本当にやりかねないんです!だから、由夏さんを怖がらせたくなくて隠してました!俺が好きなのは本当に由夏さんだけなんです!これだけは信じて下さい!」

その理由聞いて私が納得するって思ってた?
無理だよ。
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