年下男子は恋愛対象になりますか?
「どーぞ。あ、親は居ないから」

「お邪魔します」

さっきのコンビニもそうだけど、思い出の場所が上書きされていく。

隼人君を待ってる間、イートインスペースでチョコミントフラッペを飲んだっけ。初めてウチに来た時は頑なに入ろうとしなかったよね。2度目に来た時は卒業アルバムを見せた。

こんな感じで連れて来る日がくるなんて思わなかったな。

「ごめん、ちょっと待ってて」

「……はい」

隼人君はずっと元気がないまま。
玄関で待たせて階段を上る。部屋のドアを開けると、美樹はベッドを背もたれにしながら漫画の単行本を読んでいた。

「おかえりー。誰かと話してなかった?てか、由夏めっちゃ怖い顔してるよ。どうした?」

「コンビニで隼人君に会って、今……下にいる」

紙袋の中からコーヒーを取り出そうとしていた手が止まって、まじまじと私を見てきた。

「冗談じゃなくて?」

「喧嘩になりそうだから話したくないんだけど、どうしたらいいと思う!?」

「いや……、これからも付き合いたいならどこかで折り合いをつけなきゃ。厳しいこと言うけど、ずっと怒ってたら隼人君の気持ちが離れる可能性だってあるんだからね?邪魔したら悪いし帰るけど、夕飯どうするかは後で連絡ちょうだい。話ならいくらでも聞くから」

「……うん、ごめん」

使っていた布団を綺麗に畳み、読んでいた漫画を本棚に戻していく美樹。私はスマホの電源を入れて、送られてきていたメッセージを確認した。

"由夏さんの近くのコンビニに居るんですけど、少しだけでも会えませんか?"

送信時間は10時過ぎだった。
今から1時間半以上も前。

「じゃあね。コーヒー1つ貰ってく」

「待って、私も行く」

美樹の腕にしがみついて部屋から出る。
階段の上から隼人君の姿が見えたからすぐに離した。
< 656 / 727 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop