年下男子は恋愛対象になりますか?
「……こんにちは」

女子トイレ入口近くにあるパウダールーム。
そこで髪を整えていた時に起きた予想外の出来事。テーマパークで隼人君とキスしてた子と会ってしまった。

偶然?そんなことある?
だって、私のすぐ後に入ってきたよね?
いつから見られてたの?

「お話するのは初めてですよね。隼人から自慢の彼女だっていつも聞いてます。最近元気ないから喧嘩したのかって心配してたんですけど、デートしてるなら余計なお世話でしたね」

この前と同じように上から下までチェックされた。足がすくむ。怯んだら行けない気がして、必死に笑顔を作る。バレてるかもしれないけど、それでも。

「そういえば、彼女さんって隼人のバイト先に行かないんですか?こないだ行った時に来てほしいって言ってましたよ?って、これこそ余計なお世話ですよね。彼女さんも色々とお忙しいみたいですし」

「……いえ」

えっと、これって笑顔で攻撃されてるよね?
言葉の裏に潜んでいる気持ちがヒシヒシと伝わってくる。

「やだ、私ったら。お邪魔してしまってすみません。隼人に挨拶したらすぐに帰りますから。では失礼します」

誰が見ても可愛いと言うだろうその子は、個室には入らずに出て行った。礼儀正しい感じではあったけど、ただただ最悪な時間。

それに短時間で情報量が多すぎる。
呼び捨てにしてること、大学でも話してること、こないだもバイト先に行ったこと。

話の内容も本当か嘘か私には分からない。
隼人君が真逆のことを言うのを見越したうえでの作戦、だよね。

「あはは、だとしたら凄すぎ」

もう隼人君と会ったかな。
手を繋ぐ前で良かった。うん、良かった。
大丈夫、まだそこまで傷ついてない。

買った物は隼人君が持ってくれていた。
あの子のことだから私が戻るまできっと居る。大丈夫、隼人君は嫌がってる。
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