年下男子は恋愛対象になりますか?
人が居なくなったタイミングを見計らって、鏡の前で笑顔の練習をしてみる。大丈夫。笑えてる。

クリスマスモードで賑わっているお店や人々を横目に歩いていると、カフェの前にいる2人の姿が見えた。

距離があるから表情はまだ見えない。
私を理由にして、また笑顔を要求されてたりして。断るって約束してくれたし大丈夫だよね。うん、きっと大丈夫。

『由夏さんを傷付けることは絶対にしません!したくないです!』

『さすがにあの女とは距離置くでしょ。かなり落ち込んでたし、そこまで心配しなくて大丈夫だと思うよ?』

『隼人から自慢の彼女だっていつも聞いてます』

頭の中がうるさい。胸がザワザワする。
でも、下を向いて歩くことはしなかった。

あの子に対して不機嫌そうに何かを言っている隼人君と目が合う。ヤバいって表情に変わって、その場で固まっている。

「ごめん、お待たせ」

出来る限り明るく言ってみた。
あの子も笑顔でこっちを向く。

「彼女さん戻って来たね。じゃあ隼人、また大学でね。今度こそ失礼します。デート楽しんで下さい」

隼人君に軽く手を振って、私に会釈したあと人混みの中に消えていった。隼人君はずっと私を見たまま。

「ち、違うんです!これは」

「うん。ここでその話したくないかな。だから並ぼ?」

隼人君の手を取って最後尾に並ぶ。
久しぶりに繋いだ手。ギュッと力を込められた。

「あの、やっぱり由夏さんが気になっていたもの両方買いませんか!?」

「ありがと。でも、もう決めたから大丈夫だよ。隼人君はいつも通りブラックコーヒーにしてね」

自分でも不思議だったけど、あの子がいなくなってからも笑顔を続けることが出来ていた。

手を離すタイミングがよく分からなくて、左手だけで鞄の中を探っていたら「俺が払います」と言ってスマホで支払いしてくれた。
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