年下男子は恋愛対象になりますか?
私が注文したのは限定フラペチーノ。
あのあとも両方買おうと何回か言ってきたけど、断り続けたらホットのブラックコーヒーにしていた。

テイクアウトして来た道を戻る。
痛くはない力加減で、いつもより強く握られている手。

「あの、これだけは誤解しないでほしいんですけど、アイツとは本当に何もないですから!バイト先には来るなって言ってからは大学で話しかけられても無視してます!それに、こないだの土曜だってバイト先には来ていませんでした!」

立体駐車場に停めてあった車に乗り込み、エンジンをかけて暖房をつけると、さっきまで無言だった隼人君が早口でそう言った。

「これ、冷める前に飲みなよ」

紙袋からカップを取り出して渡す。
飲んでみたかった念願の限定ドリンク。少し溶けていたけど甘くて美味しい。

「……話さないでって言われていたのにすみません。でも、これだけは由夏さんに知ってもらいたくて」

予防線を張ったものの、こうなった以上意味がなくなっていた。むしろ前より疑惑が増えたわけで。

こないだの選択が間違いだったから、覚悟を決めなきゃいけない時がきたんだ。聞かなきゃ。これが正解かどうかも分からないけど。

「私とのこと誰かに話した?」

「男友達には話しましたけど、アイツには何も話していません!」

「バイト先にもっと来てほしかったの?」

手に持っているフラペチーノから視線を逸らさず、淡々と質問していく。私から飲みなよって勧めたくせに、これじゃ飲む暇もないかな。

「え?」

「そう思ってたなら直接言ってくれたら良かったのに。隼人君のお願いだったら聞いてたよ?」

「確かに来てほしいって思ったことありますけど、それは誰にも言ってません。俺、由夏さんの前でそんな素振りしてなかったですよね?」

もしかしたら、隼人君は私があの子と既に会っていたことを知らないのかも。何で言わなかったんだろう。
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