年下男子は恋愛対象になりますか?
フォークに刺さっているリンゴを口に運ぶ。
静かな部屋に響いた、シャリっという音。形は悪くても甘くて美味しかった。

「結構前に買ってくれたでしょ?わざわざ他に買うことないよ」

さっきよりも笑顔を意識した。
決して安くないものだったし、これ以上負担かけたくない。困るけど、本心でもある。

「受け取ってもらえるんですか……?」

「隼人君が嫌じゃなければ」

「嫌なわけないです!」

クシャっと笑ってくれて申し訳ない気持ちにもなった。またズルい言い方をしてしまったから。

その後はゲームをしながら他愛もない話をした。



***



いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
部屋の電気がついていて、毛布がかけられていた。

コンタクトレンズ取った記憶がないのに、視界がボヤけてもいた。思い出そうとしても頭が働かない。

「起きました?まだ眠そうですね。シーツ交換してありますから、良かったらベッド使って下さい」

聞こえてきたのは隼人君の優しい声。
私がソファーを占領していたから、床に座ってゲームをしていた。穏やかな感じがするのは、寝ぼけているせいかも。

「ありがと…………って、看病しに来たのに寝ちゃってごめん!洗濯物もすぐ取り込むね!あ、お昼食べてかったよね!?わー、本当にごめん!」

一気に吹っ飛んだ眠気。
私が寝てどうする。役に立たなすぎでしょ。

「はは、大丈夫ですから落ち着いて下さい」

眼鏡を求めて立とうとしたら止められて、部屋の隅に置いてあった鞄を取ってきてくれた。

こうするってことは、見えていないことを知っているわけで。寝る前に取るよう促してくれたのかな。

「朝早く来てくれて疲れてるでしょうし、あとは俺に任せてゆっくりして下さい」

「いや、体調悪いんだしダメだって。無理したらまた熱が上がっちゃう」

おでこに手をあててみた。
熱くはない。でも、まだ安心は出来ない。

「あれから解熱剤飲んでないですけど、平熱に戻ったみたいです」

「そうなんだ。このまま治るといいね」

隼人君の顔が曇る。
何時に帰るか考えてしまって、目が泳いだのがバレたんだと思う。

「……まだ熱があったら、明日も来てくれましたか?」
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