年下男子は恋愛対象になりますか?
『……由夏さん?』

「あ、ごめん。ケーキはチョコがいいかな。隼人君は?」

『俺もチョコが良いなと思っていました。迷惑でなければ俺が作りますね』

ケーキを作る気でいるなんて凄すぎる。
隼人君のことだから、無理して買い物に行く可能性もあるわけで。

余計なお世話かもしれないけど、でも。

少し悩んだ後、来たばかりの道を戻ることに決めた。後部座席のドアを開けて紙袋を取り出す。

「それだと隼人君が大変だし、当日お店に買いに行くのもいいよね。ホールじゃなくて、数種類のカットケーキとかでもいいし」

『俺はどっちでも大丈夫ですけど……って、由夏さん今どこにいます?さっきドア開けてましたよね?』

「あー、うん。ちょっと戻ってるとこ」

隠せないと思って正直に答えた。

『えっ、何か忘れ物しました?気が付かなくてすみません。今探しますね』

「ごめん、そうじゃなくて、その……。隼人君に渡したい物があって」

クリスマスやり直しすることになったのに、先にプレゼントを渡すのはおかしい気もする。でも、もう言っちゃったし。

『…………もしかして合鍵だったりします?』

ぐるぐる考えている時に聞こえてきたのは、悲しそうな声だった。

「……返してほしい?」

『そんなわけないじゃないですか!』

「うん。合鍵じゃないよ。急にクリスマスプレゼントを渡したくなったの」

アパートの外階段を上りきって外廊下に出ると、ドアを勢いよく開けた隼人君と目が合った。

「薄着で外に出たらダメだってば」

『すみません』

お互い、耳にスマホをあてたまま。
もう少しで着くというところで、引き寄せられられて抱きしめられる。

「隼人君のこと、振り回してばっかりでごめん」

「由夏さんは何も悪いことしてないじゃないですか。だから、もう謝らないで」

敬語じゃなかったのは珍しかった。
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