年下男子は恋愛対象になりますか?
なかなか離してくれなかったから説得して部屋に入る。明るい場所で見た隼人君の目は、いつもより赤くなっていた。

「これ、隼人君に」

「ありがとうございます!嬉しいです!」

座らずに立ったま紙袋を差し出すと、両手で受け取ってくれて。笑顔を向けてくれたから、出来る限り同じように返す。

「好み……というか、必要じゃない物だったらごめん」

「由夏さんが選んでくれた物なら、何だって嬉しいに決まってます。今、開けてもいいですか?」

「うん」

隼人君は丁寧に開封するタイプ。
包装紙はもちろん、貼ってあるテープも破かない。

クリスマスプレゼントに選んだのは、カシミヤのマフラーと手袋。グレーのコートを着ていることが多いから、店員さんと相談して両方とも黒にした。

「本当にありがとうございます!出かける時は必ず使います!」

「無理しないでいいからね。じゃあ、私はこれで。次は30日ね。一緒に買い出し行こ?」

30日を強調しすぎてるような気もする。
明日は日曜日だけど隼人君はバイトだし、月曜と火曜は私も仕事。

悲しそうな顔をされたけど、笑って誤魔化した。

「ちょ、ちょっと待って下さい!えっと、コーヒー!コーヒーを1杯だけでも飲んでいきませんか?いや、それとも別の物がいいですかね?ちょっと見てきます」

足早にキッチンに移動した隼人君。
そこを通らないと、玄関にはたどり着けない。

「お腹いっぱいだし、何も用意しなくて大丈夫だよ。今日はゆっくり休んでね」

「そう、ですか。すみません、少しだけ待っていて下さい」

冷蔵庫のドアを閉めたと思ったら、部屋に戻ってテレビボードの引き出しを開けていた。

取り出していたのは、私があげた物より小さなショッパー。見覚えのあるロゴが書いてあって、それが何かすぐに分かった。

───お揃いで買ってくれたペアリング。

「由夏さんの部屋に置いてもらえたら嬉しいです。30日楽しみにしていますね。帰り気を付けて下さい。また連絡します」

「うん。ありがと」

持ち手をギュッと握らされた。
嬉しいと言えなかった私は酷いのかもしれない。
< 694 / 725 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop