【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「んあ?レッドリザード牧場?ああ、あそこ小屋の壁が老朽化して穴が開いてたとかで、一匹残らず逃げ出したって聞いたなあ」

 なんですって!?

「コンドル!あなたよくも、そんな呑気な声で残酷なことが言えるわね!」

 学院内を探し回ってようやくコンドルを見つけたと思ったら、レッドリザード牧場の窮状を他人事のように(他人事なんだけれども)語る様子に苛立たしさが募る。

「はあっ?残酷?なんの話をしているのか、さっぱりわからないんだが」
 詰め寄るわたしの剣幕に押されながらもしっかり口答えしてくるのが、コンドルという男だ。

「案内してちょうだい」

「いや、だから…」
「案内してちょうだい、その牧場に!」

「わかった、わかった。落ち着けって」
 そして、文句を言いながらも結局わたしのわがままを聞いてくれるのもまた、コンドルの男らしい優しさなのだった。


「じゃあ、ステーシアさんとコンドルさん、レッドリザードの尻尾をお願いしますね」

 ぺこりと頭を下げるルシードに「あなたも行くに決まってるでしょ!」と告げると「なぜ僕が!?」という顔をされたが、それを言うなら「なぜわたしとコンドルが!?」と言いたい。

「ルシ、自分で材料を取りに行ってこそ価値があるんじゃないの?マーガレットに喜んでもらいたいんでしょう?人任せではダメよっ」

「わかった。足手まといになるかもしれないけど、よろしくお願いします」

 ルシードも決意を固めてくれたところで、善は急げ、早速出発しようということになった。

< 11 / 32 >

この作品をシェア

pagetop