【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 その時、自習室の入り口でバサッと書類を落とすような音が聞こえて振り返ると、青ざめたレイナードが立っていた。

 レイナードは卒業式で卒業生代表の挨拶をすることになっていて、今日はその打ち合わせを教師としていたはずなのだが、おそらく手直しがほとんどなかったのだろう。
 予想よりも早く戻って来て、俺たちの会話を聞いてしまったらしい。

「シアが…なんだって…?」

 唇を震わせて今にも倒れそうになっているレイナードの肩を掴んで、無理矢理イスに座らせた。
「大丈夫だ、レイナード。今の話はリリーの小説のことだから」

「じゃあ、今すぐシアをここに呼んで来て」

 それは…無理です……。

 俺とリリーが気まずそうに視線を逸らすと、レイナードは泣きそうな声で叫んだ。
「すぐにキースに連絡を取って、ルシードの元に鷹を飛ばすように言ってくれ!」

 卒業パーティーではリリーとダンスを踊っていい思い出を残そうと思っていたのに、とんでもないことになってしまった。

 勘弁してくれっ!!

 
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