【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 グリフォンはいとも簡単にレッドリザードを捕獲して戻って来た。

 コンドルはその度に「ヨシヨシ、えらいぞ。じゃあもう一回だ」とグリフォンの頭を撫でて褒め、喜んだグリフォンは再び岩山へ飛んで行く。

 小屋が空っぽだったせいか扉が施錠されていなかったため、受け取ったレッドリザードはさっそく小屋の中に戻して扉の開閉はルシードにお願いした。

 グリフォンは目がいいし動きも俊敏なため、あっという間に三十匹ほどのレッドリザードを捕まえてきた。

 その頃になってようやく、外の騒ぎに気付いて目を覚ました牧場主の家族は、わたしたち三人と、グリフォンと、小屋に戻ったレッドリザードを見て、大層驚いている様子だった。


 わたしがどうしても尻尾がすぐに欲しかったのだと事情を簡潔に説明し、ルシードがビリビリする壁の説明をした後、わたしたちは朝食をご馳走になった。
 グリフォンも外で生肉の塊をもらえてご満悦の様子だった。

 レッドリザードの逃走後、牧場の従業員たちでどうにか捕獲しようと奮闘中だったが、レッドリザードがすばしっこい上に罠には引っかからない賢さも持ち合わせているためにどうにも上手くいかず、ダメ元で騎士団の派遣を要請しようかと話し合っていたところだったらしい。

 レッドリザードの尻尾は、これだけのことをしてもらったのだからと無償で三本分けてもらえた。

 名前を教えて欲しいと言われたけれど、それだけは事情があって言えないと固辞した。
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