【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 コンドルはこのままグリフォンを連れて実家に帰ることになり、わたしとルシードは牧場が手配してくれた馬車で帰ることになった。

 途中の町で馬車を乗り換えるために休憩がてら広場のベンチに座っていた時だった。
 鳥らしきものが一直線にこちらへ向かって飛んでくると思ったら、ルシードが「あれ?キースお兄ちゃんの鷹だ」と言って腕を伸ばした。

 その腕に着地した鷹の脚には手紙が括りつけられている。
 ルシードが解いて開き、一通り読んだ後わたしにそれを差し出してきた。

『シア、戻って来てくれるのを待っている。戻って来てくれたら何も咎めはしない。愛してる。 レイより』

 紛れもなくレイナード様の筆跡で書かれている手紙だ。
 ただ所々、羽ペンが折れたのではないかというインクの飛び散り方をしていて、いつも優雅なレイナード様にしては珍しいなと思った。

 そしてその下には、違う筆跡の文字が書かれていた。
『山猿へ 俺はいつだって弟の味方だ。だから弟の恋を応援したい』

 文面から察するに、これはキースが書いたのだろう。

「どういうことかしら?」
 レイナード様がなぜキースの鷹をわざわざ使ってまでラブレターを送って来たのか、さっぱり見当がつかない。 

「僕、キースお兄ちゃんに恋愛のことなんて話したことないはずなんだけど、どうして知ってるんだろう?」
 ルシードも首を傾げている。

 謎だらけではあるが、キースもルシードの恋を応援してくれているようだから頑張らないとダメだと励ましつつ、用意のいいルシードの荷物の中から筆記用具を出してもらって返事を書いた。

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