【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 グリフォンの大活躍のおかげで予定よりも早く帰路につくことができたため、学院の到着も深夜ではなく夕飯時だった。
 それでも本来ならばもう寄宿舎の門は閉められていて事前の申請なしでは通してもらえない時間帯だ。

 ただ、レイナード様からの手紙に「咎めない」と書いてあったということは、入れてもらえるのかしらと期待しながら門の前で馬車を止めてもらった。

 するとそれを待ち構えていたように、門のすぐ脇にある門番の詰め所からレイナード様が飛び出してきた。
 その後ろには、カインとリリーまでいるではないか。

 レイナード様が門番に何かを告げるとすぐに門が開き、中に入れてもらうことができてホッとした。

「ただいま戻りました」

「シア!戻って来てくれてありがとう!」
 いきなりぎゅーっと抱きしめられて困惑してしまう。

 昨日の午前中にレイナード様とは会話を交わしたし、会えなかったのは今日だけのはずなのに、この熱烈な歓迎ぶりはどういうことなんだろうか?

「ねえ、略奪はどうなったの?」
 リリーに問われて、そうだった!と思い出し、レイナード様の腕からすり抜けた。

「もちろんしてきたわっ!」
 戦利品であるレッドリザードの尻尾を見せようと馬車の荷台のほうを向いたわたしの背中に、レイナード様の裏返り気味の声が飛んで来た。

「し、してきたのか!?」

 ルシードと一緒に荷物を下ろし、その中からまだ少し動いている活きのいいレッドリザードの尻尾を入れている麻袋を抱えて戻ると、レイナード様は両手で顔を覆ってしまった。

「子供まで産んだのか…」

 いやいや、何の話ですか!?

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