【番外編】円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「え?マーガレットを誘いたい?」
思わず聞き返すと、ルシードは顔を真っ赤に染めてこくんと頷いた。
なんだ、そういうことならもっと早く言いなさいようっ!
魔導具科のルシードと服飾科のマーガレットは、全く接点がないように思えるけれど、実は大有りなのだ。
学院の魔導士たちが羽織るローブは、怪我をしないように魔法を吸収・中和できる魔導具のひとつで、魔導具科の生徒たちが特殊な繊維を加工して生地を作り、それを服飾科の生徒がローブに仕立てるという分業制で作られている。
きっとその過程でマーガレットと会う機会も、もしかすると言葉を交わす機会もあったのかもしれない。
ルシ!マーガレットを見初めるだなんて、あなた、お目が高いわ!
「じゃあ、早速マーガレットを誘いに行くわよ。まだ誰からも誘われてないって言ってたから、是非是非、誘ってあげてちょうだい」
ダッシュでマーガレットの元へ戻ろうとするわたしを、ルシードが引き留めた。
「待って!まだ準備が…」
「何言ってるのよ、ルシの意気地なしっ!さあ、行くわよ」
「違うんだ、もうひとつ相談があって…」
もうっ、まどろっこしいわねえ。