車窓を流れる雨粒のように
〔月side〕

初めて太陽に嘘をついた。

妊娠していたことも化学流産も嘘。

結婚するために嘘をついた。

あの日流した涙は、嘘をついてしまったことへの罪悪感と、化学流産つまり妊娠していないという事実を知り、太陽が離れていってしまうのではないかという不安からの涙だった。

今思うと、そんな嘘をつかなくても太陽は私との結婚を考えてくれていただろう。

だけど学生である私は、学校にも友達にも妊娠したからというぐらいのことを言わないと納得してもらえないのではないかと考えた。

その嘘のおかげで、案の定学校はすんなりと休むことができた。

化学流産を知ってもなおプロポーズをしてくれた太陽に、いいよと返事をすると、私たちは結婚準備を始めた。
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