愛人～アイレン～
私も健が大好きで、一緒になりたいと願っている。


でも現実、健には経済力が無い。


「うん。近々。
あともうちょっとお金取ったら離婚する……」
「それっていつ？」
「あいつまたすぐ浮気するから、次慰謝料取れたら離婚するよ……」


ぶっちゃけ、あと三百万貰ってもこの先が心配で仕方がない。


ふと、顔を上げて健の表現を覗き込むと、今にも泣き出しそうな目をしていた。



「俺、これ以上幸が他の男と暮らしているのに耐えられないよ……」
「あと、少しでお金が入るから……」


健の気持ちは良く理解出来る。
私だって、健がほかの女と暮らしていたら発狂物だろう。


でも、私には目的が有る。


「分かったよ……。
でもさ、幸の身体旦那に触れさせるなよ……」


もし逆の立場だったら、私は泣いているだろう。


嫉妬する事が辛いと言う事くらい理解しているはずなのに、健の言葉を嬉しく思う私は狂っているのかも知れない。


「さ、触らせないよ！」


最近妊娠した私がこんな言葉を使っても、説得力なんて一ミリも無い事くらい分かっている。


本当は真司と別れて、健を選ぶべきだ。


分かっているのに金の魔力に取り憑かれているのかも知れない。
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