愛人~アイレン~
半日以上健との時間を過ごし、家に帰った。


本当は健とのペアリングが欲しかった。
でも、ネックレスにして正解だったのかも知れない。


冷静になって考えたら、左手の薬指に新しい指輪なんてしていたら真司に怪しまれるだろう。


ボヤッとした意識の中電車の窓の外を流れて行く景色を眺めた。


楽しい時間はあっという間で、居るだけで気が重くならる自宅に辿り着く。


健と一緒に居ると愛されてる感を感じるのに、家に帰ると家政婦になったような気分になってしまう。


それが、ずっと苦しかったんだ__


真司とはあんなに愛し合ったのに、いつしか私は家事をするだけの存在に成り下がってしまった。


自分では頑張っているつもりだけど、粗を指摘される生活に疲れていた事を思い出す。


何時しか、自分が女である事も忘れて虚しい生活をしていた。


誰にも必要とされない家庭の奴隷。


もし、健が居なかったらそんな生活が続いてただろう。考えるだけで背筋が凍る。


健が居るから幸せ。


健との暮らしを想像しながら、家事をこなす。
掃除、洗濯、料理。


ああ__
この家に帰ってくるのが、健ならどれだけ幸せだろう。
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