愛人~アイレン~
でも、現実は残酷。


玄関の鍵が開く音がして、足音が聞こえたかと思うと真司の姿が視界に入った。


目尻の下がった目。
少し困り眉。
全体的に見ても良い人オーラが半端ない。


最初に会った時は真司の優しそうな顔を好きになった。


でも、一緒に暮らしたら意外と冷たい人間で恋は冷めてしまったのだ。


「今日のご飯はこれだけ?」
「あ、うん」
「せめて汁物くらい作ってくれよ……」


私なりに頑張って作ったハンバーグ。


確かにスープが有れば完璧だったのだろうが、文句しか言わない真司にはウンザリしてしまう。


「もっと言い方を考えてよ……」
「ああ、もういい。外に食べに行く!!」


そう言うと玄関にリターンした。


健に会う前の私なら、真司の行動ひとつひとつに傷付いていた。


でも、今は健の存在に助けられている。


大丈夫。私にとっての真司はただのATM。
泣いてばかりだった過去から脱出出来たんだ。


真司が手を付けなかった料理にラップをして、冷蔵庫に入れると寝室に戻り健に電話を掛けた。


三回呼び出し音が鳴って、健の声が聞こえる。


「幸。こんな時間に通話して大丈夫なの?」
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