愛人~アイレン~
それって、健は居ないって事?


「健が居ないと、無理!!」
「お願いだから、幸せになって……」


そう言うと電話が切れた。
健に裏切られた感覚が、酷く私を苦しめる。


「健が居ないと幸せじゃないよ!!」
「俺との関係が旦那にバレたら、二人を不幸にする事になるんだよ……」
「旦那は私に興味ないから大丈夫」


そんなやり取りを数時間後続け、やっとの事で理解してくれた健。


「俺さあ……」
「ん?」
「耐えられそうにないんだよ。
幸が他の男と暮らしていると思うだけで、気が狂いそうだ」


気持ちは分かる。
でも……


「私の心は真司には無いよ。
好きな人は健だけ!!
私も早く旦那と別れたいけど、二人で暮らして行く為にお金が必要なの」


健。お願いだから、理解して__


「分かっているよ。俺の給料が少ないからこうなっているんだよね……」
「あと少し……。
あと、少しだから__」


そんな会話をしていると、玄関の扉が開く音がした。
真司が帰ってきた。
慌てて通話を終わらせると、真司の元に向かう。


「早かったね」
「うん!
せっかくだから、飯でも食いに行かないか?」


真司と出掛けたい訳じゃないが、コクリと頷いた。
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