愛人~アイレン~
真司と向かったのは久々にフレンチのお店。


普通なら嬉しいはずなのに、つわりで食事をする事が辛い。


「幸食べないの?」
「うん。つわりがキツくて……」
「そう」


そういうと出て来たメニューを口に運ぶ真司。
私の体調の事など、微塵足りとも考えてくれない。


結局、私はまともに食事をする事は出来ないまま、会計を済まして車に戻った。


その瞬間、明らかに不機嫌になった真司。


「幸」
「ん?」
「人が気を使って連れ出したのに、その態度は無くない?」
「態度?」
「せっかく高い金だしてるのに、ほとんど食べ物に手をつけない……」


この人は何を言っているのだろう。
この人には私の気持ちは分からない。


「わざとじゃないよ?
つわりで、食べ物の匂いが気持ち悪いの……」
「なら、いいや!」


私の言葉を信じてないのか、不機嫌になって乱暴に運転する真司が信じられない。


私はなんでこんな人を好きになったのだろう。


考えるのは健の事ばかり……


でも、健は私の愛人であって日本語ではあまり良い意味ではない。


でも中国語では夫や彼氏て意味。


そう。健は私の大切な愛人だ。
< 52 / 55 >

この作品をシェア

pagetop