砂浜に描いたうたかたの夢
すると、後ろで今1番会いたくなかった人物の声が聞こえた。



「なんだ、お前もここにいたんだ。買い物?」

「まぁ、ね」

「ふーん。今ちょうど母さんもあっちで買い物してるから、終わったら来いよ」

「う、うんっ」



去っていく背中を眺めながら、安堵の溜め息をついた。



「凪くん、もう大丈夫」



呼びかけると、積み上げられたトイレットペーパーの陰から凪くんがひょこっと顔を出した。



「バレなかった?」

「ギリギリセーフ」



危なかったぁー……。あのまま奥に行ってたら確実に見つかってた。ありがとう、フルーツ大好きながめついワンちゃん。



「良かった。人も多くなってきたし、この辺で解散する? 伯母さんが買い物してるなら、もうすぐ帰る時間だろうし」

「うん、そうする」



名残惜しいけれど、智がここにいるのなら、父も来ている可能性は充分ある。だとすると、これ以上行動を共にするのは危ない。

提案を呑み、予定より少し早めに解散した。
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