砂浜に描いたうたかたの夢
祖父が言うには、長年愛用していたので喜んでもらえるかなと思い、毎年作っているんだそう。

親思いで素敵だなぁと感動したけれど、1つ気になることが。



「でもさ、なんで両方とも原付なの?」



尋ねようとした矢先、まるで私の疑問を代弁するかのように智が口を開いた。



「それは、思い出深いからだよ」

「ええーっ。キュウリで迎えるのって、早く帰ってきますようにって意味だったよね? 遅くならない?」



私の手元にあるキュウリの原付に智の視線が落ちた。


智の言う通り、精霊馬と精霊牛の野菜にはそれぞれ意味がある。

キュウリは『早く帰ってきますように』という願いから、足が速い馬を。

ナスは『ゆっくり帰れますように』という願いから、足が遅い牛に見立てているらしい。



「大丈夫。今日中に着けばいいから」

「そうは言っても……原付って30キロまでしか出せないんでしょ? あと高速道路も走れないって」

「へぇ、そうなんだ。詳しいね」

「兄ちゃんが乗ってるんだよ。ひいじいちゃん、長時間運転できるかなぁ」
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