砂浜に描いたうたかたの夢
最初は、やっと覚えてくれたんだ! って喜んでたんだけど……。


顔周りがスッキリした自分の顔に、若かりし頃の曾祖父の顔を重ねる。


おくれ毛を出さず、後ろでぴっしり結んだ髪型は、正面からだと一見ショートヘア。

曾祖父の生き写しといっても過言ではないほど激似で、なおかつ、老眼であまり目が見えていないことを加えると……髪型で判断していた可能性が高い。

実際、名前を呼んでくれた昨日も一昨日も、耳下で2つに結んでいたから。


声で判別できないのかなとも思ったんだけど、ひいおじいちゃんが亡くなったのは、私が小学校低学年の頃。もう10年近く前だから、忘れているのかもしれない。


束の間の喜びだったな。まぁでも、名前を覚えてくれただけでもありがたい。

ただ、次から帰省する時は、髪を切る時期を考えないと。今みたいに長くないとまた間違えられそうだし。


洗顔を終わらせた後、浴室のドアを開け、昨晩干していた水着とパーカーを取る。

よし、バッチリ乾いてる。今日は泳ぎ方を教えてもらうから、動きやすいお団子ヘアにしよう。


洗面所を出て荷物部屋で部屋着に着替えていると、奥から生活音と誰かの話す声が聞こえてきた。

みんな起きてきたみたい。そろそろ行きますか。

スマホを持って部屋を後にし、居間へ向かった。
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