砂浜に描いたうたかたの夢
ハッと我に返り、口を慎む。


そうだ、凪くんの姿は私にしか見えていない。傍からだと独り言を呟いている状態だ。

誰もいないからってベラベラ話してたら、隣にいる家族達に聞こえてしまう。



「……でも、凪くんが問題児なのは事実だし。ご家族にちゃんと真の姿を教えないと!」

「おーい、勘弁してよ。最後なんだからもう少し優しくして」

「それなら凪くんもからかうのはやめ……え?」



あまりにもサラッと口にするもんだから、聞き流すところだった。



「最後って……もう会えないの?」

「……多分。お盆の時期は帰ってくるけど、こんな風に顔合わせて話せるかどうかは……」



突然明らかになった現実が頭にゴンと響いて、脳内を揺らす。



「俺さ、車には触れなかったのに、海と砂浜には触れたんだよね。ずっとなんでだろうって思ってたんだけど……最近、やっと答えが分かった気がするんだ」

「それは、何なの?」

「……未練があったから。特に、一花ちゃんへの」
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