砂浜に描いたうたかたの夢
「それを言うなら、俺も。思いっきり笑って泣いて、怒って喜ぶところとか、素直で元気なところとか。頑張り屋さんで家族思いなところとか。全部好きだよ」

「……顔も?」

「もちろん」



ついでに尋ねると、「中身のほうが嬉しくない?」と笑われてしまった。

顔面コンプレックスを持つ私にとってはそっちも重要なんだよ。



「一花がこっちの世界に来た時、正直、このまま時が止まればいいのにって思った。けど……大好きな人の人生を壊したくなかった。自分のわがままで、大好きな人の大切な人を悲しませたくなかった」



1つ1つ言葉を紡ぎ、凪くんは私の頬に手を伸ばした。

感覚はほぼないけど、こぼれ落ちそうになる涙を拭っているのかな。

胸の内を知り、私に対する愛の深さを実感して、じわりと目頭が熱くなった。



「最後にもう1度……いい?」

「……変態王子」

「わー、次は王子かい。その変態王子様のことを好きなのはどなたですか?」

「……私です」



ボソッと答えたら、ふふふっと笑う声が漏れた。
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