砂浜に描いたうたかたの夢
そこはいちいち聞かないでよ。前回は許可なく不意打ちでしたくせに。

内心文句を垂れているが、ちょっぴり嬉しいと感じてる自分がいて。結局私は凪くんのことが大好きなんだなとつくづく思った。



「……目、閉じて」



端正な顔が近づいて、そっと目を閉じる。すると、ほんのわずかだけ、唇に温もりが広がった。



「必死で助けたのにって言ってたけどさ……やっぱり凪くんもドキドキしてたんじゃない?」

「……うるさいな」



目を開けた途端、ほんのり染まっていたはずの頬が真っ赤に。凪くんの輪郭なら、りんごよりもいちごのほうが似合うかな。



「俺が恋しいからって、予定早めるなよ?」

「大丈夫だよっ。夢叶えるまでは、こっちで頑張るから」



少しにやにやしながら見つめていたら、頭の上に手を置いてきた。

また子ども扱いして……。やはりこの人は、年上の権力を振るうのが趣味なようだ。



「次は、一花ちゃんの好きなお肉、食べに行こう」

「うんっ」

「あと、公園に行ってスケッチもしよう」

「わぁ楽しみ。あとプールにも行きたい」

「いいよ。その時は泳ぎ教えるね。いっぱい写真も撮ろう」
< 309 / 322 >

この作品をシェア

pagetop