砂浜に描いたうたかたの夢
「あの、スマホ、解除してもいいですか?」

「はい……お願いします」



彼の母親から凪くんのスマホを受け取った。

電源ボタンを押してロック画面を表示させ、教えてもらったパスワードを入力する。


『n』『i』『k』『a』『l』『o』『v』『e』


計8文字のアルファベットを打ち込み、決定ボタンを押すと、待ち受け画面に変わった。


ほ、本当に開いた……。

もしかして理桜さん、私のこと知ってたのかな。毎回コメントしてたし、ユーザー名も独特だし、記憶に残ってたのかも。


心の中で「失礼します」と呼びかけ、アプリをタップをする。


カメラフォルダには、恐らく理桜さんらしき人の自撮りと、海岸ではしゃぐお友達の写真。そして、風景写真やSNSで見た絵が保存されていて。

メッセージアプリには、海水浴の予定を立てているやり取りが残されていた。



「一花ちゃん、本当にありがとう」

「いえ。力になれたのなら光栄です」



涙目で私の両手をギュッと握った凪くんのお母さん。

「他の家族にも伝えてきます」と言って、中央のテーブルで談笑する彼の父親とお兄さんの元へ駆け寄っていった。
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